日時

令和4年11月1日火曜日(書面開催)

出席者

議長:冨永春芳

副議長:谷川章雄

委員:井上孝、塩澤寛樹、坪西由美子、寺田良喜、長沢利明

事務局:鎌谷京子、宇佐美哲也、松下祐三(社会教育課)

議題

  1. 議長・副議長の選出について
  2. 令和4年度事業計画(案)について
  3. 白井塚古墳の発掘調査について
  4. 古民家園内の市文化財建造物の修繕等について
  • その他

提出資料

  • 令和4年度文化財保護事業計画(案)
  • 令和3年度埋蔵文化財発掘調査一覧
  • 埋蔵文化財年度別発掘調査件数及び事務処理件数
  • 令和3年度埋蔵文化財発掘調査地点
  • 令和3年度狛江市立古民家園(むいから民家園)入園者数
  • 令和3年度古民家園事業参加者数
  • 白井塚古墳公園整備全体図
  • 白井塚古墳公園整備イメージ鳥観図
  • 白井塚古墳調査全体図
  • 白井塚古墳1~3号礫槨実測図
  • 白井塚古墳礫槨の状況
  • 市指定文化財旧荒井家住宅主屋(狛江市立古民家園内)の修繕履歴
  • 市指定文化財旧荒井家住宅主屋(狛江市立古民家園内)の茅葺屋根の現況
  • 古民家園内の文化財建造物における修繕の基本的な考え方

会議の結果

  • 事務局で開会を宣言。
  • 議題1の審議に入る。
議題1.議長・副議長の選出について
  • 事務局から、文化財専門委員の会議の議長・副議長については、狛江市文化財保護条例施行規則第6条の規定により、任期が1年となっており、委員の互選で毎年選出していただいていることを説明しました。
  • 前年度に引き続き、議長については冨永委員が、副議長については谷川委員が、全会一致で選出されました。
  • 進行を冨永議長に交代し、議題2へ。
議題2.令和4年度事業計画(案)について
  • 事務局から、令和4年度の事業計画(案)について、令和3年度の事業の実施結果報告を含めて説明しました。
  • 文化財の調査については、各種文化財の調査を適宜行うとともに、文化財総合調査として、引き続き、亀塚古墳の再評価のため、出土遺物の再調査を進めます。亀塚古墳出土遺物のうち、國學院高等学校所蔵の資料は、令和3年度に調査を終えています。しかし、東京国立博物館所蔵の資料については、コロナ禍のために東京国立博物館が共同研究の新規受入れを停止している状況にあり、今のところ再開の目途が立っていません。共同研究の受入れが再開され次第、再調査を実施したいと考えています。
  • 文化財の管理・保存については、白井塚古墳公園の開園に向けた調整・調査等を進めていきます。とくに、令和4年度には、古墳の西側から南側にかけて削平された墳丘の断面が露出している部分を保護するための擁壁の設置工事を予定しており、工事の影響を受ける部分において、事前の発掘調査を実施しています。この結果については、後程、改めて報告します。また、古墳保存整備検討委員会において、白井塚古墳をはじめとした市内の古墳の保存整備や活用方法等について検討していきます。
  • 史跡等の管理は、兜塚古墳、教育発祥の地、万葉歌碑周辺の維持管理等を行います。文化財保存事業費補助金は、本年度も祭ばやしの保持団体に交付する予定です。
  • 寄贈資料の受け入れは随時行い、発掘調査にて出土した遺物等と合わせて、今後の活用に向けた適切な管理・保存方法を検討していきます。
  • 文化財の活用については、関連展示の実施や文化財誘導板の設置を予定しています。令和3年度は、和泉多摩川駅から猪方小川塚古墳公園に向けて誘導板を設置しました。今年度は、狛江駅から亀塚古墳公園に向けて誘導板を設置したいと考えています。
  • 学校との連携として、引き続きこまえ文化財ガイド1~3の印刷配布を行い、小学6年生を対象とした出前講座を実施します。
  • 文化財防火デーは、例年どおり狛江消防署の取組みに協力していきます。
  • 埋蔵文化財の保護については、埋蔵文化財の照会対応、事前協議、各種開発に対応した確認調査や本調査の調整、指導・監理などを行います。令和3年度の埋蔵文化財に関わる事務処理状況については、照会が1,076件、発掘の届出・通知は151件となりました。そのうち、試掘調査を実施したものは9件、うち個人住宅の新築に伴う古屋敷・相之原遺跡の試掘において、古代の住居跡1軒が確認され、引き続き調査を実施しました。そのほか、8件の試掘調査では、遺構・遺物は確認されず、本調査には至っていません。また、白井塚古墳においては、公園整備の計画策定の基礎資料を得ることを目的に、主体部及び周溝の形態・規模等を確認するため、試掘調査を実施しました。
  • 古民家園の管理・運営については、令和3年度の開園状況は、新型コロナウイルス感染拡大に対する緊急事態措置を受け、4月27日から5月31日まで臨時休園とし、6月1日から21日にかけては、建物内の立ち入りを制限しながら開園しました。緊急事態措置期間が明けた6月22日以降は建物内への立ち入りの制限は解除しましたが、その後もリバウンド防止措置期間が明ける10月24日までは、園内における飲食は禁止としました。令和4年も、まん延防止等重点措置期間となった1月21日から3月21日までは園内における飲食を禁止しました。その後は、入園にあたりマスクの着用と手指の消毒に協力をいただきながら、通常通り開園しています。このような状況ですが、令和3年度は入園者数はやや回復し、18,874人となりました。
  • 古民家園における事業は、新型コロナウイルスの影響で25事業を中止し、中でも飲食を伴う事業はすべて中止となりましたが、計43事業を実施しました。定例事業である「古民家園で遊ぼう」と「昔あそび体験」のほか、夏休みの子ども向け教室を中心に、実施した事業においては、ほとんどが定員を超える申込みがありました。また、新たな取組みとして、「むいからお月見音楽会」と題し、都立狛江高等学校箏曲部と連携した演奏会を実施しました。十五夜のお月見に合わせて、開園時間を延長し、古民家の座敷を舞台に演奏が披露され、多くの来園者がありました。また、正月に実施した「古民家園でも初春まつり」にも多くの来園者がありました。
  • 古民家園は、令和3年4月27日に開園20周年を迎えましたが、園内に移築・復元されている旧荒井家住宅主屋の茅葺屋根の傷みが目立つようになってきたため、開園20周年を機に、茅葺屋根の葺き替えを予定しています。また、髙木家長屋門につきましても、板壁の一部が反り返る等の経年劣化が認められるため、必要な修繕を行う予定です。こちらは後程、議題4として説明します。
  • 歴史公園の管理については、令和2年4月に開園した猪方小川塚古墳公園、亀塚古墳公園、令和3年4月に開園した土屋塚古墳公園の維持管理を行ないます。なお、猪方小川塚古墳公園では、令和3年度に、石室覆屋内部の遮水処理に支障が生じていたことから、一部、改修作業を行いました。こちらは都指定文化財の現状変更の手続きを行い、東京都文化財保存事業費補助を受けて実施しました。猪方小川塚古墳につきましては、引き続き横穴式石室の保存処理状況の経過観察及び状況に応じたメンテナンスを継続していきます。
  • その他に、令和4年度には、深大寺と調布市教育委員会と狛江市教育委員会の共催事業として、「(仮)深大寺の国宝白鳳仏の来歴を探る」と題した講演会・座談会の実施を予定しています。
  • 事務局からの説明の後、議題2の令和4年度事業計画については全会一致で了承されました。
  • なお、委員からは、出土遺物や寄贈資料の活用という点において、さらなる公開・活用を望む旨、意見が出されました。
  • また、委員からは古墳公園の維持管理に関して、常に適切な維持管理作業を続けていくことが重要であるとの意見がありました。
  • 委員からは、市技芸である祭り囃子について、コロナ禍で演奏できる機会がほとんどない状態が3年続いており、新規会員も集まり難く、後世に継承していくことが難しい状況にあると考えられることから、少しでも市民に関心をもってもらえるような工夫ができないかといった意見が出されました。
議題3.白井塚古墳の発掘調査について
  • 事務局から、白井塚古墳の公園整備計画の概要と令和4年度の調査結果について報告しました。
  • 白井塚古墳は、狛江古墳群のなかでも典型的な古墳のひとつであるものの、墳丘の西側及び南側一部が、1960年代に大きく削平されたままの状態であり、将来的には、墳丘が大きく崩壊し良好な状態で維持することができない可能性が考えられることから、削平された墳丘断面を保護しつつ、公園化を進めていく方向で検討を進めてきました。具体的には、平成26年度に「狛江市公園・緑地の配置方針」のなかで、猪方小川塚古墳公園、亀塚古墳公園、土屋塚古墳公園とともに、歴史公園として整備する方向性を決定し、平成27年12月15日には、調布 都市計画公園8・2・3号白井塚公園として告示し、平成29年度から令和2年度にかけて、用地の取得を進め、令和3年度には公園整備工事の設計を進めてきました。
  • 公園の設計にあたっては、西側及び南側の削平された墳丘断面を擁壁で保護した上で、東側から古墳にアプローチする際、古墳の形態・規模を捉えやすいように整備し、墳丘だけではなく、周溝を含めた古墳の全体像が分かるように、周溝の位置を土系舗装で表示した上で、古墳の東側にある竹林は、間伐した上で残し、南側の市道から延びるアプローチから竹林を抜けると古墳に辿り着くようなかたちで公園全体の整備を計画しました。令和4年度には墳丘西側・南側の擁壁工事を行い、令和5年度に公園全体の整備工事を進め、令和6年度当初に白井塚古墳公園として開園する予定で計画を進めてきました。
  • 令和4年5月10日から、擁壁工事の影響を受ける範囲を中心に発掘調査を実施しました。令和2年度・3年度に試掘調査を実施し、周溝の位置・規模を確認するとともに、墳丘上では礫槨の一部と考えられる礫の集中を確認していましたが、今回の調査の結果、墳頂の北寄りから、遺存状態が良い礫槨2基を含む礫槨3基が、さらに墳丘南寄りから礫槨1基が検出されました。そのうち、1基からは直刀や鉄鏃等が出土しています。
  • 礫槨は、その構造的な特徴から、原型を留め難い構造物と考えられますが、今回検出された礫槨は、極めて良好な状態で今日まで残されており、貴重な事例と考えられます。また、多摩川流域において、主体部が礫槨であることが明らかな古墳は、多摩川台2号墳(田園調布)、野毛3号墳(野毛)のほか、第六天塚古墳(喜多見)でその可能性が指摘されている程度であり、類例が少ないこと、対して、狛江古墳群では、絹山塚古墳、松原東稲荷塚古墳、東和泉6号墳、橋北塚古墳があり、白井塚古墳を合わせると5基となり、礫槨を有する古墳が多く築造されたことが、狛江古墳群の特徴のひとつである可能性が高く、そのなかでも礫槨の多埋葬がみられる白井塚古墳は、今後、狛江古墳群の様相を考えていく上でも極めて貴重な古墳であると考えられます。
  • この礫槨が擁壁工事により失われた場合、白井塚古墳の文化財的な価値は著しく損なわれると考えられることから、可能な限り礫槨を現地に保存できるよう、擁壁工事の着手を延期し、擁壁の構造等について再検討を行うとともに、礫槨の保存整備方法について検討していくことになり、現在、礫槨は埋め戻して保存しています。
  • そのため、令和4年度に予定していた西側及び南側の擁壁整備工事、令和5年度に予定していた公園整備工事は見送り、令和4年度から6年度にかけて、擁壁の見直しと礫槨の保存整備方法について検討を行い、令和7年度以降、これまで作成してきた公園整備の計画の見直しを進めていく予定です。
  • 今回の調査に関しては、現在整理作業を進めている途上であり、また具体的な保存整備の方法については、谷川委員を中心に狛江市古墳保存整備検討委員会において検討していただくことになりますが、将来的には、市史跡指定を含めて検討いただきたいと考えております。
  • なお、6月18日(土)には現地見学会を開催し、約250名が参加、6月下旬から7月半ばにかけて、近隣の小学校14学級、中学校7学級が現地を見学しています。
  • 委員からは、白井塚古墳の多埋葬は、この時期の埋葬形態としては、他に例をみないものであり、学術的にも極めて貴重なものと考えられ、狛江古墳群の特徴である初期群集墳の出自や系譜に迫る糸口として重要なものと考えられることから、擁壁の見直しと礫槨の保存整備について十分な検討を要望する旨の意見がありました。
  • 委員から、礫槨が現地保存できるように、擁壁の計画の再検討を進めて欲しいとの意見が出されました。
  • 委員から、整備にあたっては、古墳の築造方法、出土遺物等を含めて現地の展示方法を工夫して欲しいといった意見や、公園整備にあたっては見学しやすいルートを検討して欲しいといった意見、さらには狛江駅からの道案内や自転車置き場等にも配慮すべきとの意見が出されました。
  • 委員からは、公園整備後には、市史跡への指定を検討する必要があるとの意見や、今後、指定の必要が生じた際には、速やかに諮問されることを望むといった意見が出されました。
議題4.古民家園内の市文化財建造物の修繕等について
旧荒井家住宅主屋の茅葺屋根の葺き替えについて
  • 事務局から、令和4年度に予定している旧荒井家住宅主屋の茅葺屋根の葺き替え工事等について説明しました。
  • 狛江市立古民家園は、平成3年に市文化財に指定された旧荒井家住宅主屋を移築・復元し、平成14年4月27日に開園、その後、平成22年2月には旧髙木家長屋門を移築・復元し、現在に至っています。
  • 旧荒井家住宅主屋は、劣化が生じた板の間の床板や畳、雨戸・障子等の建具類の修繕を行ってきたほか、屋根についても、茅が痩せた部分に差し茅を施したり、風雨の影響を最も受ける棟(グシ)や棟上に取り付けられた煙出し、雨水が集中する北側角屋部分の修繕、北側下屋の修繕、台風による被害を受けた煙出し部分の屋根の修繕等を行ってきました。しかし、経年劣化に加えて、ここ数年、棟部分の傷みが著しくなり、大雨の後には雨漏りも認められる状況です。また、これまで本格的な修繕を行っていない屋根南面や葺き降ろしとなっている東面、さらに西面を中心に表層の茅の一部が脱落し、表層の茅を押えている竹材(押さえ竹・ほこ竹)が露出しつつあるなど、傷みが著しくなってきています。屋根全体が雨水等の影響を受けやすい状態であり、景観上も好ましい状況ではありません。
  • 現状では、茅葺屋根の素地になる梁組み、それを支える小屋組みなど文化財建造物の躯体に損傷はみられませんが、現状を放置し、屋根の梁組み、小屋組みまで影響が及ぶようになると、文化財建造物としての保存に影響が生じ、躯体を含めた本格的な修繕が必要になる事態が想定されます。そこで、古民家園開園20周年を向かえたことを機に、文化財建造物として保存を要する部分を維持しながら、今後も保存・公開・活用していくために、茅葺屋根の全面的な葺き替え工事を行うこととしました。
  • 葺き替え工事は、令和4年11月14日(月)から令和5年3月初旬までを予定しています。工事期間中は、主屋内と主屋周辺を中心とした園庭の大部分に立ち入ることはできませんが、長屋門は見学することができること、また葺き替え工事の様子をフェンス越しにご覧いただくことが可能であることから、通常どおり開園します。また、葺き替え工事の進捗状況にあわせて、解説・見学会等を実施する予定です。
  • 今回葺き替え工事を実施するに当たり、改めて、古民家園内の文化財建造物における修繕の基本的な考え方を整理いたしました。
  • なお、葺き替え工事の経費に充てるためクラウドファンディングを実施します。募集期間は、工事期間に合わせて、令和4年11月15日(火)から令和5年2月12日(土)までとし、目標金額は200万円としました。
  • また、令和5年3月下旬には、葺き替え工事完成のお披露目と開園20周年を兼ねた記念行事を実行委員会形式で実施する予定です。工事の進捗状況により変更となる可能性もありますが、現在のところ、3月最終土曜日あるいは日曜日を予定しています。
旧髙木家長屋門の板壁修繕について
  • 事務局から、同じく古民家園内に移築復元されている旧髙木家長屋門の板壁の修繕について説明しました。
  • 旧髙木家長屋門では、建物南辺の板壁の一部の板材に反り返りや亀裂、ヒビ割れがみられており、風雨の影響を受け、乾湿を繰り返した結果、板材の傷みが進んだものと考えられます。この部分は、移築・復元に際して、新材で補った部分であることから、今回も新しい杉板に取り換え、旧状に復したいと考えています。
  • 委員からは、文化財建造物については、日々の手入れも大切であり、状況をみながらの修繕が必要となるため、一概に年数で決められないことから、修繕の基本的な考え方を作成しておくことは必要ではないかとの意見が出されました。
  • 委員からは、古民家は時間が経つほど傷みが目立ち、保存・活用に支障が出てくることが多いことから、早急な対応をお願いしたい旨、意見がありました。
その他
  • 次回の会議については、令和5年2月頃を予定していますが、白井塚古墳の保存整備の方向性や旧荒井家住宅主屋の茅葺屋根の葺き替え工事等の進捗状況によって、それ以前の日程で開催する可能性もあること、また、対面による会議とするか、今回同様、書面開催あるいはweb開催とするか等を含めて、改めて事務局にて調整していくこととなりました。

議長、閉会を宣言。

文化財専門委員名簿

議長

冨永春芳

副議長

谷川章雄

委員

井上孝、小町守、塩澤寬樹、坪西由美子、寺田良喜、長沢利明

公募市民委員がいない理由

狛江市文化財の指定及び解除等重要事項を審議するために専門的な知識が要求されるため。