令和2年度第1回狛江市文化財専門委員の会議会議録

1.日時

令和2年7月27日月曜日午前10時から11時15分まで

2.場所

市防災センター403会議室

3.出席者

議長:冨永春芳
副議長:谷川章雄
委員:井上孝、小町守、鶴壽子
事務局:森厚太、宇佐美哲也、松下祐三(社会教育課)

4.欠席者

塩澤寛樹

5.議題

1.議長・副議長の選出について
2.令和2年度事業計画について
3.歴史公園(古墳公園)の開園について
4.狛江市文化財の指定について
その他

6.提出資料

1.令和2年度文化財保護事業計画(案)
2.埋蔵文化財年度別発掘調査件数及び発掘届出等文書処理件数
3.平成31年度調査一覧・本調査の概要
4.平成31年度狛江市立古民家園入園者数・事業参加者数
5.猪方小川塚古墳公園・亀塚古墳公園パンフレット
6.狛江市歴史公園条例・同条例施行規則
7.(仮称)土屋塚古墳公園の整備について
8.狛江市文化財の指定について(諮問)(写)
9.指定理由書(案)
10.狛江市文化財保護条例(抄)・指定文化財一覧

7.会議の結果

・事務局で開会を宣言。
・議題1の審議に入る。

議題1.議長・副議長の選出について

議長については冨永委員が、副議長は谷川委員が、全会一致で選出されました。
進行を冨永議長に交代し、議題2へ。

議題2.令和2年度事業計画について

・事務局から、令和2年度の事業計画について、平成31年度の事業実施結果報告も交えながら説明しました。
・文化財の調査については、各種文化財の調査を適宜行うとともに、文化財総合調査として、亀塚古墳の再評価のため、國學院高校にて所蔵している同古墳出土遺物の整理を進めていきます。
・文化財の管理・保存については、歴史公園の開園に向けた工事・調整として、土屋塚古墳を古墳公園として整備し、開園に向けた調整等を進めていきます。また、古墳保存整備検討委員会を設置し、市内の古墳の保存整備や活用方法等について検討していきます。
史跡等の管理は、兜塚古墳、土屋塚古墳、教育発祥の地など市が管理する文化財の保護管理を行なうほか、万葉歌碑周辺の維持管理等を行ないます。文化財保存事業費補助金は、本年度も祭ばやしの保持団体へ交付する予定です。寄贈資料の受け入れは、随時行い、発掘調査にて出土した遺物等の資料を含め、適切な管理・保存方法を検討していきます。
・文化財の活用については、4月に開園した猪方小川塚古墳公園と亀塚古墳公園の開園記念事業として講演会とウォークラリーの開催を予定しています。
文化財関連展示は、市役所2階や公民館2階の展示スペースで文化財等を展示する予定です。
文化財説明板は、指定文化財の説明板の設置を予定しています。
学校との連携は、例年、小学6年生を対象とした出前授業を4月から5月までの間に実施し、古民家園では小学3年生の体験学習を受け入れていますが、新型コロナウイルスの影響で、出前授業については本年度の実施を見合わせました。体験学習は、例年2月頃に実施しており、その時点での状況によりますが、実施は難しいものと見込まれます。
文化財防火デーは、例年どおり狛江消防署の取組みに協力していきます。
・埋蔵文化財の保護については、埋蔵文化財の照会対応、事前協議、市内遺跡の調査や本調査の指導・監理など、例年どおりになります。昨年度の埋蔵文化財に関わる事務処理状況としては、989件の照会があり、前年度に比べ70件ほど減少しました。発掘の届出・通知がなされたのは102件で、試掘調査は7件となり、うち2件で遺構・遺物が確認され、1件の本調査を実施し、もう1件は本年度本調査を実施しました。このほかに、平成30年度の試掘調査で遺構・遺物が確認され、昨年度本調査を実施したのが1件あります。また、古墳公園の整備に伴い、古墳の墳丘や周溝の位置を確認するため、亀塚古墳で本調査、土屋塚古墳で試掘調査を実施しています。
・昨年度に実施した本調査について、子育て・教育支援複合施設の建設に伴う田中・寺前遺跡での発掘調査では、奈良時代の住居跡2軒や中世以降の掘立柱建物跡2棟などが検出されましたが、調査区域は既設の建物の影響を受け、検出された遺構・遺物は少なかったこと、古屋敷・相之原遺跡では、調査地点は岩戸南の明静院の北で、古墳時代後期以降の住居跡3軒などが検出されたこと、亀塚古墳では、公園整備のための事前調査で、周溝の位置、規模、断面形態や土層堆積状況などを確認するために実施し、前方部に沿って幅3mの周溝が検出され、円筒埴輪片が出土したことを説明しました。また、本年度5月に小足立中村南遺跡にて本調査が行なわれ、古代の住居跡3軒が検出されたことを説明しました。
・古民家園の管理・運営については、古民家の維持管理、年中行事の展示や体験教室等の事業を実施し、事業内容等については運営評議会を開催して検証・検討していきます。なお、昨年度の入園者数は、22,663人で一昨年度と比べると2,651人の増加となりました。
・歴史公園の管理については、本年度4月に開園した猪方小川塚古墳公園と亀塚古墳公園の維持管理を行ないます。また、公開に当たって保存処理を施した猪方小川塚古墳の横穴式石室については、保存状況の経過観察を行い、状況に応じて必要なメンテナンスを検討していきます。

議題3.歴史公園(古墳公園)の開園について

・議題2に引き続き、事務局から、歴史公園の開園について説明しました。
・平成23年に発掘調査を実施した猪方小川塚古墳は、保存整備に向けて猪方小川塚古墳調査保存検討委員会及び保存整備検討委員会での検討を経た後、平成30年度から石室の保存処理と公園整備を開始し、4月1日に猪方小川塚古墳公園として開園しました。また、亀塚古墳についても、敷地を広げてエントランスの整備を行い、亀塚古墳公園として開園しました。
両公園の位置付けは、都市公園法に基づく都市公園の一つで、特殊公園のうちの歴史公園に該当しますが、古墳を対象としているので、公園の名称を古墳公園としています。
歴史公園については、狛江市歴史公園条例及び同条例施行規則を定めて設置目的、開園時間、休園日、禁止行為などを規定しており、猪方小川塚古墳公園は夜間閉園することにしています。門扉の開錠・施錠や清掃は、シルバー人材センターに委託しています。
・引き続き、事務局から、(仮称)土屋塚古墳公園の整備について説明しました。
・本年度は、市指定史跡土屋塚古墳のうち、市が所有する古墳西側の一部を歴史公園として整備します。墳丘にかからない北西隅に人が立ち寄れるスペースを設け、現在道路に面して設置している説明板をこのスペースに移設して、安全性を確保します。また、古墳北側の個人宅との境界の壁・フェンスなどを整備します。本年度9月頃に着工し、令和3年4月に開園する予定です。
・以上の説明の後、議題2の令和2年度事業計画については全会一致で了承されました。
・委員から、猪方小川塚古墳公園について、泥岩というもろい石材で造られた石室の実物を、公開するのは難しいものであったが、大変よく整備されています。今後は、石室の状態を保つことができるかどうか、きちんと経過観察し、状況を把握していく必要があります。こうした石室を公開するために整備した事例はほとんどないので、よい事例になればとの意見がありました。

議題4.狛江市文化財の指定について

・議長から、「寛文二年銘の石造供養塔」については、令和元年5月17日付けで、教育委員会から文化財指定について諮問がありました。昨年度の12月の会議では、現地での確認調査を実施し、3月の会議にて答申に向けて審議を進めていく予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で3月の会議は中止になりました。諮問から1年以上経過していることもあり、できれば本日の会議にて答申をまとめたいとの発言がありました。
・事務局から、これまでの会議にて検討してきた内容を踏まえてまとめた指定理由書(案)について説明しました。
指定理由書は、まず「寛文二年銘の石造供養塔」の概要を述べ、本供養塔のうち地蔵菩薩の塔は、慶岸寺の大願のもと岩戸村の村民8人が施主となり、信仰を共にする集まりによって造立されたものと考えられること、銘文に「庚申之歳」とあることから庚申塔と考えられてきたこと、庚申塔とすると多摩地域では最古級のものになり、村内に庚申信仰の講中が結ばれていたことになること、聖観音の塔は、本願が川井助左衛門母で、銘文に「念佛供養」とあることから、村内の念仏講中によって造立されたものと考えられること、本願が女性で、女性が信仰対象とする聖観音を彫刻していることから、造立主体は女性であったとも考えられること、両塔は、施主が異なるものの、造立年月日は同じ寛文2年2月10日であり、両塔の造立主体が密接な関係にあったことがうかがえることを述べ、本供養塔は、狛江地域の江戸時代前期における民間信仰の様子を伝えるもので、かつ、市内に残る民間信仰にまつわる供養塔の中では最初期のものになり、これらの諸点から、本供養塔は市指定の文化財として長く保存・活用されるべきものと判断されるとまとめたことを説明しました。
また、指定理由書(案)の指定の種別と名称について、指定の種別は、狛江市文化財保護条例第2条第3号に掲げる、「生活、生業、風習等の推移を示す有形の民俗資料ならびに民政に関する文献および金石文等で、資料的価値の高いもの」に該当するものと考えられ、同条例の第7条では、「第2条第3号に掲げるもののうちから指定されたもの」については、「市郷土資料」に類別するとしており、よって指定の種別を「市郷土資料」としたこと、これまで指定された市の文化財の中には、名称に年号を掲げる際に西暦を併記している例があり、名称において西暦の併記をどのようにすべきか、こちらも審議いただきたい旨を説明しました。
・議長から、昭和51年に「延徳二年の月待板碑」を指定していますが、後に、年号と年だけでは分かりにくいとの意見があり、昭和54年に「慶長一五年(一六一〇)の雲版」と「文禄三年(一五九四)の検地帳」を指定した際、年号と年に西暦を併記したという経緯があります。
・委員から、西暦を併記している事例をあまり聞かないが、併記しても問題ないものと考えます。かなり遡りますが、昭和54年に西暦を併記すると決めた経緯もあり、また、分かりやすくもなるので、今後も継承していくということでよいのではないかとの意見がありました。
・議長から、名称については、西暦の併記を継承して「寛文二年(一六六二)銘の石造供養塔」に修正し、その上で事務局がまとめた指定理由書(案)を決定することを各委員に諮りました。
・各委員とも異議はなく、指定理由のとおり市指定文化財に値するものとして教育委員会へ答申することを全会一致で決定しました。

その他

・事務局から、多摩川にて貨ボート屋を経営してきた「たまり屋」が所有する屋形船について、市が寄贈を受け、古民家園への移設を計画していることを報告しました。この屋形船は、多摩川の最後の船大工とされる久保井富蔵氏が製作したものになり、多摩川の歴史や民俗を知る上で貴重であるのみならず、昭和20年代以降、狛江の多摩川河川敷が、都心に住む人たちの行楽地として賑わっていたことを伝える貴重な資料になること、久保井氏の船大工道具は、既に東京都の文化財に指定されていることなどを報告しました。
・事務局から、平成31年度の刊行物として、文化財調査報告書第33集「狛江市の寺院彫刻」と文化財散策マップを刊行したことを報告しました。
・委員から、2月8日から神奈川県立博物館にて開催された特別展「井伊直弼と横浜」で、市指定文化財井伊直弼公敬慕碑が紹介されましたが、新型コロナウイルスの影響で、会期途中で中止になってしまったことの情報提供がありました。

・次回の会議については、秋頃の開催を予定していますが、新型コロナウイルスの影響で会議の日程等を決めることは難しいので、事務局が日程の調整を行うこととなりました。

議長、閉会を宣言。

文化財専門委員名簿

議長
冨永春芳

副議長
谷川章雄

委員
井上孝、小町守、塩澤寛樹、鶴壽子

公募市民委員がいない理由
文化財の指定及び指定解除等重要事項を審議するために専門的な知識が要求されるため。