1.日時

令和5年12月18日月曜日午後3時から4時20分まで

2.場所

市役所304会議室

3.出席者

  • 委員長:谷川章雄
  • 副委員長:池上悟
  • 委員:松井敏也
  • 事務局:社会教育課長、社会教育課文化財担当副主幹、社会教育課文化財担当主査

4.欠席者

なし

5.議題

  1. 猪方小川塚古墳石室保存処理の経過観察及び課題について
  2. (仮称)白井塚古墳公園の保存整備について

その他

  1. 兜塚古墳南側の危険樹木伐採について

6.配布資料

  1. 猪方小川塚古墳石室保存処理の経過観察及び課題について
  2. 猪方小川塚古墳石室白色物質除去の状況
  3. 猪方小川塚古墳石室内の温湿度・土壌含水率報告2
  4. (仮称)白井塚古墳公園の保存整備について
  5. (仮称)白井塚古墳公園平面図
  6. (仮称)白井塚古墳公園鳥瞰図
  7. 白井塚古墳全体図・墳頂部調査区全体図
  8. 擁壁構造の検討
  9. 兜塚古墳南側の危険樹木伐採について
  10. 兜塚古墳の環境整備

7.会議の結果

  • 委員長、開会を宣言。
  • 社会教育課長挨拶。
議題1.猪方小川塚古墳石室保存処理の経過観察及び課題について

提出資料1から3をもとに、猪方小川塚古墳石室保存処理の経過観察及び課題について説明しました。

  • 事務局から、石室覆屋前面の強化ガラス下の隙間から雨水等が侵入している案件については、前回の会議で示された委員の意見を受けて、7月に強化ガラスと仕切り板との隙間を遮水板と防水テープで塞ぐ処置を施したところ、石室覆屋前面からの雨水等の侵入が改善されました。一方で、石室前室両側からの浸水は、令和3年度末の遮水処理改修により大幅に改善したものの、石室前室左手では部分的に浸水が見られ、浸水部分に接する石材上面の粉状化の原因になっている可能性があります。雨水が侵入しているのか、地下からの水分なのか、特定できてはいませんが、状況を観察して推測するに、遮水シートの継ぎ目の処理が不十分であったことが原因と考えられます。よって、浸水部分を中心に土系舗装を一度除去し、状況 を確認していきたいと説明しました。
  • 委員から、石室玄室内に設置している土壌水分計を浸水部分に移し、水分量を計測して状況を確認してみる方がよいのではないかとの意見があり、まずは土壌水分計を移設して状況を確認することになりました。
  • 事務局から、石室の石材の状態について、令和3年度末に石室覆屋内の遮水処理を改修し、石室覆屋側面からの雨水等の侵入が改善されたことにより、石室前室の乾燥が進み、石材に粉状化と瘡蓋状剥離が見られています。一方で、石室玄室の石材には、粉状化と瘡蓋状剥離は見られておらず、これは、当初の保存処理の際、前室の石材は乾燥が十分でなく、薬剤が石材の奥まで含浸せず、表面に留まってしまった結果と考えられます。現在は、遮水処理により石室前室の乾燥が進んでいるので、改めて前室の石材に薬剤を含侵させる処置を施していきたいと説明しました。
  • 委員から、石室内の石材を確認したところ、玄室の石材は強度があり、前室の石材は玄室のそれより強度が見られず、表面の強化剤が剥離している状態にありました。やはり、保存処理時に石材に水分があり薬剤が十分に含浸しなかった影響と考えられます。現在は、浸水が徐々に改善され、石材が乾燥してきているので、乾燥が落ち着いた状況を見計らい改めて保存処理を施す方向でよいのではないかとの意見があり、状況をみて、前室の石材に薬剤を含浸させる処置を施すことになりました。
  • 委員から、石室前室手前の石材について、シートのようなものを敷き、粉状化と瘡蓋状剥離から保護する処置を施した方がよいのではないか。特に、剥離してしまった部分は保護が必要だと考えられます。例えば、剥離していない元の石材の表面を基準面にして、この基準面に合わせるように剥離部分を粘土のようなもので保護していく。手順としては、改めて石材に薬剤を含浸させて強化する保存処理を施し、次いで石材上面をシートで保護し、剥離した部分は擬土にて保護の処置を施す、こうした石材の保護処置を検討してみる必要があるのではないかとの意見があり、今後、前室の石材を保護する方策について検討していくことになりました。
  • 事務局から、白色物質の表出について、前回の会議にて、YunisolEVⅡを塗布して除去作業を行い石材表面の状態がかなり改善されたことを報告しましたが、夏場を過ぎた頃から、再び白色物質が表出してきている状況にあり、根本的な原因は不明ですが、引き続きメンテナンス時を中心に結晶化する前に除去し、結晶化が進んでしまった部分は薬剤を使用して除去していくことを説明しました。
  • 事務局から、石室内の温湿度と土壌水分量の計測について、前回の会議にて、石室玄室内の湿度が高い状況にあると推測され、追加で玄室内に温湿度計を設置して計測していくことを報告しましたが、その結果、玄室内は石室覆屋軒下に比較して温度の変化の幅は小さいものの、やはり湿度は高い状況にありました。土壌水分量は、石室下部より上部の方が含水率が高く、降雨の影響を受けて大きな変化が見られますが、下部の変化は緩やかになっています。床面は、土壌含水率は低いものの湿度は高い状況にあることを説明しました。
  • 事務局から、石室覆屋内に小動物の侵入の形跡が見られ、侵入個所と思しき所にネットを張るなど、対策を施しているものの、まだ侵入の痕跡が見られています。今のところ石室内までは侵入していないようですが、侵入を防ぐ手立てを講じる必要があることを説明しました。
議題2.(仮称)白井塚古墳公園の保存整備について

提出資料4から8をもとに、(仮称)白井塚古墳公園の保存整備について説明しました。

  • 事務局から、(仮称)白井塚古墳公園の整備については、前回の会議にて報告したとおり、公園整備に先立つ発掘調査にて4基の礫槨が確認され、礫槨を現地保存する場合、公園整備に伴い墳丘の西側及び南側に施工を予定している擁壁が、礫槨の一部に影響を与えるものになるので、着工を一旦見送り、礫槨全体を現地保存できるよう、市の整備部局で擁壁の形態、構造等を再検討してきました。礫槨への影響を回避する工法として、(1)杭基礎による逆T型擁壁工、(2)杭基礎による逆L型擁壁工、(3)自立式鋼管杭擁壁工、(4)自立式親杭形式擁壁工の案を作成し、東京都多摩建築指導事務所の指導を受けたところ、いずれの工法も建築基準法に定められた規定に適合せず、施工不可との判断を受けました。そのため、当初計画していた間知ブロック積で擁壁を施工する以外に方法はなくなり、この場合、やはり礫槨の一部が擁壁の裏込めの施行範囲にかかってしまいます。 墳丘西側は、宅地に隣接しており、安全対策等を考えると建築基準法に則った擁壁を施工することが不可欠であり、一方で、礫槨は現地保存することが望ましく、工事と保存を整合させていかに公園整備を図っていくか、判断が求められるところになっていることを説明しました。
  • 委員から、間知ブロック積以外に方法はないのか、また、間知ブロック積とした場合、道路沿いなどで見られるように法面の傾斜をもう少し急にして裏込めが礫槨にかからないようにする措置をとることはできないのかとの質問がありました。合わせて、礫槨には手を付けず擁壁の裏込めを施工することはできないかとの質問がありました。
  • 事務局から、住宅地内で4メートルを超える擁壁を施工する場合、間知ブロック積による工法を採用する必要があること、また法面の傾斜をこれより急にすることはできないことを回答しました。また、礫槨に手を付けずに工事を進めることができないか、すでに墳丘の断面がえぐれているところでもあり難しいものと思われるが、その可能性は適宜確認していくことを回答しました。
  • 事務局から、間知ブロック積の擁壁を施工するとなると、礫槨の一部を切らざるを得なくなり、その場合、礫槨の保存方法は、施工範囲にかかる部分について、礫槨を一旦取り上げ、施工後、元の位置に復元するといった方法が考えられることを説明しました。
  • 委員から、間知ブロック積の擁壁の施工は避けられないようであり、礫槨の現地保存を図るため、一部を切ってしまうのはやむを得ないものと考えられます。ただし、原状回復できるよう正確に測量し、調査した上でひとつずつ丁寧に取り上げていき、工事完了後、丁寧に復元していく、こうした保存の措置をとる必要があるとの意見がありました。
  • 委員から、礫槨の上部を発泡ウレタンで保護し、側面に楔を入れて下から持ち上げるような形で取り上げることも可能ではないかとの意見がありました。
  • 委員長から、間知ブロック積の擁壁の施工を前提として、礫槨の現地保存に向けて取り組んでいくことが確認され、礫槨を一度取り上げて、工事完了後、元に復する方法を検討していくことで各委員の了解を得ました。
  • 事務局から、礫槨の見せ方については、礫槨の保存を含めた公園整備と連動するものであり、まずは公園整備を完了させ、環境が整ったところで改めて検討していただきたいことを説明しました。
  • 委員長から、礫槨を現地保存するため、墳丘上の樹木については、根も含めて取り除く必要があり、現地の環境は大きく変わるものと想定されます。礫槨の見せ方については、引き続き検討していきますが、実質的なところは公園整備完了後の環境を踏まえて検討していくことで各委員の了解を得ました。
その他

提出資料9・10をもとに、兜塚古墳南側の危険樹木伐採について報告しました。

  • 事務局から、兜塚古墳については、古墳を囲むフェンスの外側になりますが、敷地南縁の環境整備が課題となっています。令和4年度の会議で報告したとおり、樹木診断にて危険な状態との結果を受けた高木4本については、令和5年1月26・27日に伐採し、雨天時に水溜まり、泥濘となり、墳丘上の土砂が流出してしまう箇所については、令和5年2月28日に土系舗装を施しました。今後は、墳丘を囲むフェンスの改善や、敷地南側に隣接する道路の幅員確保のため、フェンスの位置までセットバックし、高木を伐採し土系舗装を施した箇所を道路として整備する必要が生じるものと想定されます。この点に関しては、兜塚古墳は東京都の史跡に指定されているので、都教育委員会の文化財部局と調整しながら取り組んでいくことを 報告しました。
  • 次回の会議については、(仮称)白井塚古墳公園の保存整備の進捗状況に応じ、事務局にて日程等を調整することになりました。
  • 委員長、閉会を宣言。

狛江市古墳保存整備検討委員会委員名簿

委員長
谷川章雄(早稲田大学教授、考古学)

副委員長
池上悟(立正大学名誉教授、考古学)

委員
松井敏也(筑波大学教授、保存科学)

公募市民委員がいない理由
審議内容が、古墳の整備等に関する極めて専門的な知識が求められることから、専門各分野の学識経験者で構成しているため。