令和7年度第1回狛江市古墳保存整備検討委員会会議録(令和8年3月10日開催)
1.日時
令和8年3月10日火曜日午前10時から11時30分まで
2.場所
市防災センター303会議室
3.出席者
- 委員長:谷川章雄
- 委員:松井敏也
- 事務局:社会教育課長、社会教育課文化財担当副主幹
4.欠席者
- 副委員長:池上悟
5.議題
1.白井塚古墳礫槨保存調査の実施について(報告)
2.猪方小川塚古墳 令和7年度継続課題とその対応について
3.兜塚古墳の環境整備(高木伐採)について
その他
6.提出資料
- 白井塚古墳礫槨保存調査の実施について(報告)
- 猪方小川塚古墳 令和7年度継続課題とその対応について
- 兜塚古墳の環境整備(高木伐採)について
7.会議の結果
- 会議に先立ち、社会教育課長挨拶。
- 委員長、開会を宣言。
議題1.白井塚古墳礫槨保存調査の実施について(報告)
白井塚古墳については、主体部である礫槨の一部が西側擁壁の施工範囲に当たることから、令和7年度に擁壁施工範囲に当たる礫槨の一部を取り上げる礫槨保存調査を実施したため、調査経過等について事務局から報告しました。
- 調査は、令和7年11月10日(月)から12月19日(金)にかけて実施しました。1号及び2号礫槨については、擁壁施工範囲に当たる礫を取り上げつつ、礫槨の断面形態及び掘り方の調査を行いました。うち、2号礫槨については、西側の先端が樹木の根により大きく攪乱されており、掘り方が残されていた範囲を参考にしつつ、本来の礫槨の規模を示すと考えられる礫の分布状況を確認しました。
- 1号礫槨では、先端北西側の礫が墳丘構築土であるローム主体土に薄く被覆された状態で検出され、礫槨の形態としては左右非対称となり、側壁を構成する礫の出土レベルにもかなりの差が認められました。レベルごとの礫の分布状況等から、新旧2基の礫槨が少し捻じれた状態で上下に重複している可能性を想定しつつ調査を進めましたが、断面観察、堆積土層の観察からは、礫床の重複とは判断できませんでした。そのため、現段階では、1号礫槨は大礫の上に細かな礫床が構築された丁寧な作りであった可能性と、上部の礫槨によって下部の礫床が破壊されてしまった可能性のふたつが考えられます。ただし、2号・4号礫槨の作りを踏まえると、前者の可能性は低いものと考えられます。
- 2号礫槨については、北側の高木の根により大きく攪乱された礫を除き、長軸の規模の根拠となる礫の配列は復元すること、3号礫槨の西側に散乱した礫は、本来の位置を留めていないため、復元しないこととしました。
- 4号礫槨については、擁壁工事を踏まえ、可能な限り西側を拡張したところ、部分的に攪乱を受けているものの、礫の分布範囲から礫槨の本来の規模が想定可能となりました。また、今回拡張した範囲から直刀の破片が出土しています。
- その他に、墳丘上に他の構造物が残されていないか確認するため、4号礫槨の南側、墳頂の西寄り、墳丘の南東側、墳丘の北東側で試掘調査を行いました。その結果、墳丘の南東側で防空壕を検出しました。元所有者の話や墳丘のコンター図等から防空壕の存在は確認していましたが、内部が一部空洞のまま残存している状態です。現状では開口部側に大木があり調査が不可能であるため、樹木伐採後に調査を予定しています。
- 今後の予定は、令和8年6月から7月頃に墳丘上の樹木を伐採、9月頃から令和9年3月にかけて擁壁工事を予定しています。なお、墳端部の樹木伐採後に防空壕の調査と、擁壁工事に合わせて墳丘断面の観察・記録作成を予定しています。令和9年度には、公園全体の整備を進め、令和10年3月に竣工予定です。
- 今回取り上げた礫槨の一部を復元する時期については、擁壁工事後から公園整備工事着手前までの間とするか、公園整備後とするか、全体の工程を踏まえ検討していきたい旨説明しました。
- 委員からは、礫槨を復元しても現物を公開することが難しい点を踏まえ、見せ方を工夫していくべきで、とくに墳丘の下から本来の墳丘の状態や主体部の位置・様子等を3Dで見られるような方策も検討していくべきとの意見が出されました。
- 委員からは、防空壕については安全上及び墳丘の保存上、埋め戻しとなるが、植栽などでその位置を示すような工夫も必要ではないかとの意見が出されました。また、防空壕の調査に際しては、その上部に遺構等が残されている可能性も考慮して調査に当たる必要があるとの指摘がありました。
議題2.猪方小川塚古墳 令和7年度継続課題とその対応について
事務局から、猪方小川塚古墳における石室保存処理の経過観察と処理状況等について報告しました。
- 石室覆屋内部への雨水の侵入については、昨年度、覆屋内にタイムラプスカメラを設置し、侵入箇所が特定できたため、その部分についてトレンチ調査を行いました。その結果、墳丘上の防水シートと覆屋壁面下の仕切板との接合が不十分な部分が確認されたことから、遮水シートを追加し防水テープで塞ぐ等の処置を行いました。また、これに合わせて、覆屋三方向の壁面でトレンチによる確認と、遮水シートの追加、防水テープでの接合など必要な処置を行い、埋め戻しを行いました。
- その結果、石室上部での土壌含水率は大幅に改善し、安定してきています。また、点検口付近の値も、降雨後一時的に含水率が上昇するものの、比較的安定した経過が観察できることを報告しました。処理から半年近く経過した段階で特段の問題がみられないことから、ネコ等の侵入で荒らされた部分も含めて石室外周の舗装土壌の改修を行っていきます。
- 石室石材の表面については、経過観察において石材の表面が剥離する可能性が認められる部分については、隙間にパラロイドを充填し接着しています。門柱石の表面や前室の一部では、白色物質の表出(塩類風化)による表面の劣化が見られますが、白色物質の除去後、強化剤を塗布する等対応を行っています。
- なお、白色物質の表出は以前に比較して少なくなってきており、発生を確認した時点でハケ・ブラシ等で除去するとともに、結晶化した部分は、硫酸カルシウムスケール溶解剤を用いて除去しています。白色物質の表出は、壁面中段で顕著であり、とくに疑土との境目、石材のエッジ部分などで結晶化が見られます。
- また、遮水処理改修の結果、全体的に石室石材の乾燥が進んでいるようで、玄室部分では、上位2段の石材の乾燥が進み全体的に石が白味を帯びて見える状態です。白色物質の表出は壁面中段付近にみられること、下段では石材の表面の湿度が高く、地衣類が発生するため、その都度、薬剤で除去しています。
- その他に、令和7年度には、石室覆屋内に人感センサーで点灯する照明を設置したこと、石室覆屋前面の強化ガラス下の遮水処理については、素材等を再検討する必要があることを報告しました。
- 委員から、今回の遮水処理改修により、石室内部への水の侵入はある程度コントロールができてきたこと、屋外での保存展示である点や保存整備の方針から、完全な乾燥状態を保つことは不可能であるが、これまでの遮水処理改修を受けて安定期に入ったとみられることが指摘されました。塩類風化の原因となる白色物質の表出は乾燥期に顕著となりますが、原因は水の侵入であるため、水が切れれば、今後、白色物質は表出しなくなると想定されます。ただし、白色物質が表出した部分は、石材に隙間があることを示しているため、表出がみられなくなった時点で、追加で強化剤を塗布するなど対応が必要であるとの指摘がなされました。
議題3.兜塚古墳の環境整備(高木伐採)について
事務局から、令和8年度に兜塚古墳の指定地内において高木の伐採を行う予定であることを報告しました。
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兜塚古墳では、令和4年度に都指定史跡の環境整備の一環として、南側の市道に面した墳端部の高木4本を根元で伐採し、墳端に沿った部分を土系舗装するなど、部分的に整備を行いました。
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令和7年に入り、墳頂に生えている松の高木に松枯れが生じており、危険なため根元で伐採する必要が生じています。これに合わせて、令和8年度に北西側から北側墳端部の危険樹木の伐採を行う予定です。なお、高木の伐採は、東京都文化財保存事業費補助事業「兜塚古墳環境整備」として実施する予定です
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委員からは、史跡地内の樹木については、墳丘の保存に影響を与えるものや、見学者や周辺に危険を及ぼす可能性があるものを伐採していくことはやむを得ず、昨今、公園での倒木等で被害も出ている点を踏まえ、枯れた樹木の処置は早めに行う必要があることが指摘されました。
- 兜塚古墳については、都の史跡に指定された後、ほとんど手付かずとなっています。見学者が近づきにくい雰囲気もあるため、高木の伐採だけではなく、計画的な整備を検討していくべきとの意見が出されました。
- 史跡整備に当たって、どのような植生が望ましいか特段基準があるものではないが、史跡の保存に影響を与える樹木は伐採することを前提とした上で、ある程度、史跡地内の景観や植生、特有の生態系を維持していく工夫も必要なのではないかとの意見が出されました。
- 白井塚古墳公園の整備が終わると、古墳公園としての整備は一段落となりますが、今後、兜塚古墳については危険な樹木等の整理を進めることと合わせて、全体の整備計画を検討していくこととしました。
その他
- 事務局から、本検討委員会としての開催は今回が最後となり、令和8年度以降は、狛江市文化財保護審議会の分科会として引き続き御尽力いただきたい旨を説明しました。
- 委員長、閉会を宣言。
狛江市古墳保存整備検討委員会委員名簿
委員長
谷川章雄(早稲田大学名誉教授、考古学)
副委員長
池上悟(立正大学名誉教授、考古学)
委員
松井敏也(筑波大学教授、保存科学)
公募市民委員がいない理由
審議内容が、古墳の整備等に関する極めて専門的な知識が求められることから、専門各分野の学識経験者で構成しているため。
