2024年12月
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平成31年4月25日(木曜日)午前10時から11時まで
猪方小川塚古墳保存整備用地・現地
委員長:谷川章雄
副委員長:池上悟
委員: 松井敏也
事務局:白鳥幹明、宇佐美哲也、松下祐三(社会教育課)
その他:フレームデザイン(株)(保存整備工事実施設計受託者)、新成田総合社(保存処理施工者)
なし
1.平成31年度の保存整備工事の工程について
2.石室の保存処理方法・手順等について
(1)保存処理期間中の雨水及び墳丘土壌中の水処理について
(2)保存処理用の仮設覆屋の設置
(3)石室石材の具体的な保存処理方法
3.その他
・猪方小川塚古墳保存整備工事(平成31年度の工程)
・猪方小川塚古墳保存整備工事(配置図、覆屋平面図、立面図、断面図)
・委員長が開会を宣言。
・事務局から、保存整備工事の工程について、前回の検討委員会後に変更となった点を説明しました。
・4月半ばに予定していた石室覆屋の建方工事が、鉄骨の納期の都合から6月半ばに変更になりました。そのため、仮設の覆屋を設置したうえで、石室石材の保存処理を先行することとなりました。
・また、前回の委員会において指摘されたことを踏まえ、保存処理を行う前に墳丘外周の浸透管埋設工事を行うことしました。
・現在、墳丘外周の浸透管埋設と保存処理用の仮設覆屋の設置までが終了していることを説明しました。
・事務局から、石室石材の保存処理期間中における雨水対策等について説明しました。石室石材の保存処理に着手する前に、墳丘外周に浸透管を埋設したこと、その深さは石室底面からマイナス400ミリメートルの深さに埋設したこと、浸透管は、公園整備工事において雨水排水マスへ接続する計画ですが、保存処理期間中は、浸透管の末端を石室覆屋基礎工事で掘削している基礎部分へ落とし、排水処理すること等を説明しました。
・事務局から、保存処理用の仮設覆屋の設置状況について説明しました。仮設覆屋は、単管パイプと木材で骨組を作り、UVシート#5000(遮水、遮光)で屋根、側面から墳丘表面を覆ったものです。また、石室手前からの雨水等の侵入を防ぐ施設を設けたことを説明しました。
・また、覆屋の屋根には、換気のためのファンフィルターを設置する予定であることを説明しました。ファンフィルターは上部を防音シートで覆い、騒音の広がりを抑制しつつ、内部への雨水の浸入を防ぐこと、必要に応じてフィルターを交換しながら作業を進める予定であることを説明しました。
・ファンフィルターから生じる音については、噴出面から1メートルの位置で約54デシベルとされており、日中の当該敷地周辺の騒音計測の結果から、周辺の生活音の範囲内であること、さらに上部を防音シートで覆うことや工事用の鋼板囲いがあることから、敷地外に届く音量はそれほど大きくならないものと考えています。
・事務局及び保存処理施工者から、石室石材の具体的な保存処理方法、手順について説明しました。
・石室の保存処理は、まず床面から着手し、つぎに壁面の乾燥の進み具合をみながら、壁面の保存処理に着手する予定です。
・石室床面については、床面上のゴミ(虫の死骸・草の根等)、土埃等を除去し、礫を水洗いブラッシングによりクリーニングした後、礫の間に酸化マグネシウムを重量比で15パーセント混ぜた土壌を詰め、礫を固定しつつ、礫の間から虫や根が侵入することを防ぎます。西側の床面から西壁の一部に空いた盗掘と考えられる欠損部分についても、床面同様に酸化マグネシウムを用いた方法で土壌を固化します。
・石室壁面については、ゴミ(虫の死骸・草の根等)、汚れや土埃等をやわらかい刷毛等を使いて落とし、目地に詰まった土は、刷毛、竹串等を用いて除去します。また、乾燥・劣化が進み粉状化した部分や目地については、現状を観察しつつ、表面から浮いた部分を除去していきます。
・その後、強化材として、メチルメトキシシロキサンを主成分とする薬剤に触媒TAを3%の割合で配合して石材に塗布し、表面に濡れ色が生じることを防ぐため、また強化材を石材のより深くまで浸透させるために、メタノールを塗布します。強化材は、4キログラム毎平方メートルを基準に、石材の状況を見ながら塗布し、その後メタノールを2キログラム毎平方メートルを基準に、スプレー、洗浄瓶、刷毛等を使い分けて塗布します。強化材の塗布後は、表面をラップ等で覆い、乾燥までの時間を長くします。
・壁面の目地については、クリーニング・精査の際に採取した土壌等を用いて、擬土を作成し目地詰めを行います。
・石室外側は、残存する墳丘上に客土し、表面を酸化マグネシウムで固化します。
・なお、強化材と触媒の割合については、(1)触媒なし、(2)触媒1%、(3)触媒3%の3パターンで試験を行い、その結果を受け、触媒3%を選択し、表面の濡れ色が強くなることを防ぐために、強化材の塗布後、メタノールを塗布することとしました。
・メタノール塗布のタイミング・塗布量については、タイミング・塗布量を変えて計16パターンで試験を行いました。その結果、強度、石材への浸透の深さ、濡れ色防止の3点から、強化材の塗布後に、強化材の半分量を塗布するパターンがもっとも効果的と判断しました。
・委員からは、保存処理にあたっては、換気、脱臭処理等に十分注意を払いながら進めることや、仕上がり後の色調・風合いなどにも配慮して状況を見ながら進めて欲しい旨の意見や、天候に左右される作業となるため、状況が悪い中で無理に作業を進めないこと等の意見が出されました。
・委員からは、石材が欠損した部分、とくに西壁奥側上部や奥壁の右手上部など、石材表面の風化が進んだ部分等を補う方策や、壁面上端の処理等について、引き続き検討すべきとの指摘がなされました。
次回の検討委員会については、石室石材の保存処理が進み、石室覆屋、墳丘復元作業が進んだ7月上旬頃に開催することとして、具体的な日時については工事の進捗状況をみながら、今後調整していくこととなりました。
・議長、閉会を宣言。
委員長
谷川章雄(早稲田大学教授・狛江市文化財専門委員、考古学)
副委員長
池上悟(立正大学教授、考古学)
委員
松井敏也(筑波大学教授、保存科学)
公募市民委員がいない理由
審議内容が、石室石材の保存処理、古墳の整備等に関する極めて専門的な知識が求められることから、専門各分野の学識経験者で構成しているため。